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4.292015
個性的なドラマーになるために②
「戦略的切り捨て」を行うと、物理的にも精神的にも、大きなメリットがあります。
まず、物理的には、自分の得意な事や好きな事で勝負できるため、苦手な事や嫌いな事にわざわざ時間を使う必要が無くなります。
この空いた時間を、得意な事や好きな事に丸々「投資」できるので、さらに自分の武器が磨かれていきます。
精神的なメリットは、苦手な事や嫌いな事を考えなくて済むという事です。
煩わしい事を全く考えなくても良いというのは、大きな「ストレス・フリー」につながります。これは、人間関係も同じですね(笑)。
私自身も、元々は気が多い方で、ドラムに関しても、ストライクゾーンは広ければ広いほど得をするものだと思っていました。
可能な限り、幅広く知識を吸収し、なるべく「スキ」を作らない事が、プロへの近道であると考えたからです。
ところが、現実は全くの逆でした。それを初めて痛烈に思い知らされたのは、忘れもしない19歳の時。とあるライブでの事です。
それまでの私は、自分のドラムプレイには「超」がつく程、自信を持っていました。
15歳でドラムを始めてからというもの、独学で練習に没頭し、すぐにプロを志しての活動に励んでいたからです。
その日の出演バンドは、私たちも含めて、確か4~5組だったと思いますが、私は、リハーサルで対バンの演奏を観て愕然としました。
他の出演ドラマー全員が、私より上手くてカッコイイのです(笑)。しかも、僅差とかではなく、相当なレベルの高さです。
全く経験した事のない感覚に、私は戸惑いました。それまで、ライブの対バンで「上手いな」と思うドラマーを目にしてはきたものの、それはごく稀に見かける位のレベル。
たとえ、どんなドラマーが出てきても、高校生同士では負ける気がしなかったのです。
ところが、フタを開けてみてビックリ。大学生や社会人バンドのレベルの高さと言ったら…。私は、襟を正す思いでした。
何しろ、出演者の中で、自分がダントツで「ビリ」だと感じたのは、この日が初めてだったのです。
しかし、お陰で、次のような事に気付く事ができました。
「練習しても練習しても、テクニックで言ったら、上には上がいるな」
「もしも、テクニックだけで全国のドラマーに順位をつけたとしたら、自分は下から数えた方が早いな」
「自分は、テクニック以外の分野で勝負しなければ、プロにはなれないな」
そして、この時、私は「戦略的切り捨て」を決意したのです。
それは、ドラマーとして、「テクニックを切り捨てる!」という大胆なものでした。
当然の事なのですが、自分がヘタる程練習しても、超絶的に上手いプレイヤーというのは、いくらでもいるものです。
「テクニックをまともに競っていては、他のドラマーたちに埋もれてしまう」という事実を垣間見た私は、その日を境に、目標を「テクニカルなドラマー」から「歌心のあるドラマー」へ、一気にシフトチェンジしたのでした。
後でリサーチしてみると、その日の出演者の中で、バンドの楽曲を作曲しているドラマーは、1人もいませんでした。
つまり、バンドで作曲も担当していた私以外は、生粋の「テクニカル・ドラマー」だったのです。
また、周りを広く見回してみても、作曲までメインで手がけるドラマーには、あまり出会った事がありませんでした。
チャンスとばかりに、私は、「作曲スキルを今まで以上に磨く事」と、「楽曲の中でヴォーカルを第1に活かすドラミング」に徹する決意をしたわけです。
それからというもの、ドラマーとして自分のやるべき事や注力すべき事が整理され、自分の武器だけを磨いていく事に迷いがなくなりました。
もちろん、プロを目指す上で、最低限のテクニックは必要不可欠です。
その上で、逆立ちしても勝てない市場には、本格的には乗り出さずに、逆に競合の少ない自分だけの市場を見出して、そこで旗を掲げて勝負する。
そう考えると、「戦略的切り捨て」とは、ビジネスと大いに似ていますね。
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